福岡地方裁判所柳川支部 昭和59年(わ)56号 判決 1984年7月19日
本籍
福岡県大川市大字津一一番地
住居
同 所一〇番地の四
会社役員
石川尚義
昭和一二年一二月一五日生
右の者に対する公務執行妨害、傷害被告事件について、検察官小林三男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年に処する。
この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
押収してある模造刀一振(昭和五九年押第二三号の1)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和五八年六月一七日午前一〇時一〇分ころ、福岡県大川市大字津一〇番地の四株式会社石川石油商会二階和室において、個人所得税の調査及び賦課等に関する職務を担当している大川税務署第二部門統括国税調査官大蔵事務官竹村省吾及び同署上席調査官大蔵事務官吉原喜紀の両名が、被告人から提出されていた昭和五五年度の所得税にかかる異議申立の内容について調査中、同人らに対し、「貴様達は全部領収証とか契約書とか偽造しとって言いよろうが。承知せんぞ。」、「貴様どんなただじゃすませんぞ。」などと怒号して、同人らが持参した調査書類を取りあげたうえ、抜身の模造刀(昭和五九年押第二三号の1)を振り上げるなどして脅迫し、右模造刀で右吉原の左大腿部を突き刺し或いは肩部を足蹴にするなどの暴行を加えもって、右竹村、吉原両事務官の職務の執行を妨害するとともに、右暴行により右吉原に加療約一〇日間を要する左大腿部滅創の傷害を負わせたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 竹村省吾、吉原喜紀の検察官に対する各供述調書
一 司法警察員作成の実況見分調書
一 医師足達剛作成の診断書
一 足達道の司法警察員に対する供述調書
一 押収してある模造刀一振(昭和五九年押第二三号の1)
(法令の適用)
被告人の判示所為中各公務執行妨害の点は刑法九五条一項に、傷害の点は同法二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、右は一個の行為で三個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い傷害罪につき定めた懲役刑で処断することとし、その刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、被告人に侮悟反省の情が認められ、禁錮以上の刑に処せられたことのない等の情状を考慮し、同法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、押収してある模造刀一振(昭和五九年押第二三号の1)は判示犯行に供された物で、被告人以外の者に属しないから同法一九条一項二号二項により没収する。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 仲吉良榮)